Forecast -Mystic Cafeへようこそ-
私は目の前にいる男に奥さんと最近何かいざこざは
なかったかそれとなく探ってみる。
「そういえば先週、妻が大切にしていたブレスレットを
なくしてしまったんです。妻が言うには大事な人との思い出の品、らしくて」
男は写真を取り出した。
その写真には学生服を来た女性二人組が写っており
右腕にブレスレットがつけられている。
「僕が部屋に鍵をなんとか開けて入室した際に
壊してしまったので持ち帰って直そうとしたのですが、
次の日部屋の様子を見たら彼女が泣いていたんです。見つからないと」
男は続けた。
多分原因はそれだろう。
物には、長い年月を経て神や精霊(霊魂)などが宿る
九十九神(つくもがみ)と呼ばれるものがある。
探りを入れてみますか。
そう言わんばかりに私は机の上にカードを広げる。
彼につけるのは節制だが、もう一つ必要のようだ。
「(出てきて。ナシャ)」
「御意」
ナシャ、カードは教皇。慈悲、連帯・協調性、信頼、教える立場の人のカードである。ナシャは文字通り説教好きだが与えられた仕事はこなしてくれるから私は気に入っている。
突然、依頼者がこう言い放った。
「実は最近、家にもあまり帰らないのです。何かに怯えてる表情で警察にも相談をしているらしくて...
心配で心配で夜も眠れません、どうか先生お願いします!」
私はナシャに伝心と呼ばれる
言わば心のみで行う言葉を使い、問い掛けてみる。
因みに一般の方から見たらおかしいと思われるかも
しれないが、フォート達とは毎回こういう形で
会話をしている。
(どう?ナシャ。なんとかなりそう?)
(そう聞きながら、お願いされるのでしょう?
分かってるさ。)
ナシャは悪態をついた。
私のタロットは基本的に依頼者と、
相手がいる場合はその相手側の相互に
一番相応しい道を新たな選択跂として
増やしてくれる。本来向かうべき未来の
選択跂を増やす事で、全て悪い方へ行かないように
道標を作ってくれるという話が
ネットを通じて一部の人々に
知れ渡っているのだ。
彼がここに来て相談しているのも
それがきっかけだろう。
あわよくば、自分の思うように
生きたい、というのは
人の持つ欲望の一部だしそれを
批判したり妨げる権利は誰にも
持ち合わせていないのだから。
だが、望みが叶うことが
絶対とは限らない。まぁ、今のところは
ほぼ叶っているのだが。
(うまくやってよね)
(言われなくても)
フォートは普段、私以外に見えない。
だから人前に出る時は必ず
動物のキーホルダー姿になる必要がある。
ナシャの場合は子猫のキーホルダーだ。
「あの、これは?」
男は私が渡そうと机に置いた
猫のキーホルダーを手に取り、質問を
投げかけて来る。
「これは願い成就の為の原因解明用
キーホルダーとなります。
しばらくこのキーホルダーを
肌身離さず持ち歩き、
三日後またこちらにいらして下さい。
その時に貴方の目指す夢に近づく為の道を
お伝え致します」
「ふざけるな!」
男は声を荒げ始めた。
しかし次の瞬間突如謝罪をしつつ
語り始めた。
「すみません。気をつけて入るのですが
自分がこうしたいと思う気持ちが強いほど
感情的になるらしくて。せっかく
ご相談に乗ってくださるのに申し訳ない。
いやぁね、職場ではとても気をつけて
いるのですが、外ではどうも
押さえられないんです。
もしかして、それで彼女も
私のことを忘れてしまってるのかな...
あ、いや。なんでもないです」
男はそういいながら立ち上がり、
鞄を持ちはじめた。キーホルダーは
いつのまにか胸ポケットに入れてある。
どうやら声を荒げた後、淡々と話ながら
入れたらしい。
「ありがとうございます。宜しくお願い致します」
そして男はカフェを後に、静かに家路に向かった。
なかったかそれとなく探ってみる。
「そういえば先週、妻が大切にしていたブレスレットを
なくしてしまったんです。妻が言うには大事な人との思い出の品、らしくて」
男は写真を取り出した。
その写真には学生服を来た女性二人組が写っており
右腕にブレスレットがつけられている。
「僕が部屋に鍵をなんとか開けて入室した際に
壊してしまったので持ち帰って直そうとしたのですが、
次の日部屋の様子を見たら彼女が泣いていたんです。見つからないと」
男は続けた。
多分原因はそれだろう。
物には、長い年月を経て神や精霊(霊魂)などが宿る
九十九神(つくもがみ)と呼ばれるものがある。
探りを入れてみますか。
そう言わんばかりに私は机の上にカードを広げる。
彼につけるのは節制だが、もう一つ必要のようだ。
「(出てきて。ナシャ)」
「御意」
ナシャ、カードは教皇。慈悲、連帯・協調性、信頼、教える立場の人のカードである。ナシャは文字通り説教好きだが与えられた仕事はこなしてくれるから私は気に入っている。
突然、依頼者がこう言い放った。
「実は最近、家にもあまり帰らないのです。何かに怯えてる表情で警察にも相談をしているらしくて...
心配で心配で夜も眠れません、どうか先生お願いします!」
私はナシャに伝心と呼ばれる
言わば心のみで行う言葉を使い、問い掛けてみる。
因みに一般の方から見たらおかしいと思われるかも
しれないが、フォート達とは毎回こういう形で
会話をしている。
(どう?ナシャ。なんとかなりそう?)
(そう聞きながら、お願いされるのでしょう?
分かってるさ。)
ナシャは悪態をついた。
私のタロットは基本的に依頼者と、
相手がいる場合はその相手側の相互に
一番相応しい道を新たな選択跂として
増やしてくれる。本来向かうべき未来の
選択跂を増やす事で、全て悪い方へ行かないように
道標を作ってくれるという話が
ネットを通じて一部の人々に
知れ渡っているのだ。
彼がここに来て相談しているのも
それがきっかけだろう。
あわよくば、自分の思うように
生きたい、というのは
人の持つ欲望の一部だしそれを
批判したり妨げる権利は誰にも
持ち合わせていないのだから。
だが、望みが叶うことが
絶対とは限らない。まぁ、今のところは
ほぼ叶っているのだが。
(うまくやってよね)
(言われなくても)
フォートは普段、私以外に見えない。
だから人前に出る時は必ず
動物のキーホルダー姿になる必要がある。
ナシャの場合は子猫のキーホルダーだ。
「あの、これは?」
男は私が渡そうと机に置いた
猫のキーホルダーを手に取り、質問を
投げかけて来る。
「これは願い成就の為の原因解明用
キーホルダーとなります。
しばらくこのキーホルダーを
肌身離さず持ち歩き、
三日後またこちらにいらして下さい。
その時に貴方の目指す夢に近づく為の道を
お伝え致します」
「ふざけるな!」
男は声を荒げ始めた。
しかし次の瞬間突如謝罪をしつつ
語り始めた。
「すみません。気をつけて入るのですが
自分がこうしたいと思う気持ちが強いほど
感情的になるらしくて。せっかく
ご相談に乗ってくださるのに申し訳ない。
いやぁね、職場ではとても気をつけて
いるのですが、外ではどうも
押さえられないんです。
もしかして、それで彼女も
私のことを忘れてしまってるのかな...
あ、いや。なんでもないです」
男はそういいながら立ち上がり、
鞄を持ちはじめた。キーホルダーは
いつのまにか胸ポケットに入れてある。
どうやら声を荒げた後、淡々と話ながら
入れたらしい。
「ありがとうございます。宜しくお願い致します」
そして男はカフェを後に、静かに家路に向かった。