Forecast -Mystic Cafeへようこそ-

男の家は小さなアパートだった。
どう見ても女性のいる形跡はない
一人住まいのような一室。

(狭いなー)

ナシャは霊体に戻りキーホルダーが
今手元に無いことに気付かれぬよう
そっと手元を離れ辺りを見渡す。

見ると壁一面女性の写真が飾られており
遠いところから撮影したもの、
何処か違うところを見つめているもの等
様々なものが広がっていた。
後は彼とその女性の少し若い
感じの女性が一緒に写っている写真が
一枚あるくらい、だろうか。

一つ気になる点といえば
別の男性と中睦まじく一緒に
アイスクリームを食べている写真。
こちらも何故かカメラの方を
向いていない写真だった。

ナシャは他には何かないか徹底的に
辺りを探ってみた。

男は家に帰るや否や絨毯の上に座り
一つの厚いアルバムを取り出した。

そしてこう言い出した。

「ただいま...」



約束の三日後、男はそわそわしつつ
部屋にやってきた。

私は彼をソファーに座るよう誘導し
ナシャにウィンクで合図をした。

男は目を丸くし辺りを見回した。

先程までカフェにいたはずなのに、
ソファーに座るように言われ
座った途端、なぜか写真に
写っていた彼女が
目の前にいたのだ。

彼女は告げた。

「もう、会わないで欲しいの｣
つ
(やめろ)

男は呆然と立ち尽くしながら
やめてくれ、許してくれと
念じ始めた。
これは男の過去、つまり
彼女と別れた日の回想とも言える
思い出の中だった。

「好きな人が出来たの。だからもう、
一緒に遊べない。ごめんね。
さようなら」

そして気付いた時、男は


彼女の首を絞めていた。


彼女は必死に抵抗するが
男の力には敵わない。

そして事切れた。


彼女の鞄からは男と楽しげに
遊んでいる写真が一枚、
悲しげに顔を見せていた。