Forecast -Mystic Cafeへようこそ-
「知っていたんです...」

男は涙を静かに流しながら語り出した。
そう、彼は彼女を妻と言っていたが
婚約どころか、交際もしていない
友人関係だったのだ。

「私は彼女が好きでした。でも彼女は
束縛されるのが嫌いな人だった。
だから自分は彼女の都合が
良いように呼ばれたらどんな時も
駆けつけていました。」

「けれども、彼女は別の男性と交際してしまい、
怒りに任せて彼女を殺してしまった、と」

私は彼の発言に問うかのように投げかけた。

「そうです。でも彼女が悪いんですよ。
僕の気持ちに気づきもしないで、
別の男と付き合うなんて。浮気ですよ
酷い女なんだから死んで当たり前です」

「そうかしら?」

私は再び問い掛けた。

「仮に酷い女としたら、私からすれば
その人のやり方は生温いわ。だって
好意を持ってることに少なからず
気づいてるもの。だから遊ぶという名目で
貴方を利用して自分のストレス発散に
付き合わせてたというなら、
男の存在を教えないで、遊べる人として
関係を保ってた方が楽、じゃない?」

「どういう...ことでしょう?」
男はわからないというように
涙を拭い、こちらを見据える。

「考えれば分かるわよ。彼女も恐らく
途中までは貴方が好きだった。でも
一向に告白する様子もないし、
このままの関係が続いてもお互い
何も変わらないのは明白だった。
だからかけてみたんじゃない?
貴方に別れを告げた次の日に、
知り合いの男性をデートに誘って
写真が取りやすい、そして隠れて撮影が
しやすい植木の近いテーブルに
腰掛けてアイスクリームを一緒に
食べて。そこまでして貴方がどう動くか、
試してみたかったのよ」

「...どうしてそれを...」

男は驚き、充血した目を丸くして
ぽつりと呟いた。

「知ってるのかって?それは、私が
占い師だから。私は貴方の全てが見えるのよ。

なんてね」

私はネタバラシをした。

ナシャから取得した情報を駆使すると
誰でも分かる手品のような真実。

始め彼は、彼女の事を妻と呼んでいたが
途中から彼女がという言葉に変わっている点。

普通なら彼女なんて言葉、赤の他人ではない
身内が使うとは考えられない事。

更に言うと実はナシャの情報無しでは
全て憶測で行動しているがために
どういう展開になるか先が読めなかったこと。

はっきしいえばかなりの確率で
口から出まかせを平然としていたのである。

(困った奴)

その様子を影から見ていたナシャは
深くため息をついていた。
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