拾われた猫。




「私は心が読めるわけじゃない。

ただお前が考えていそうな事は何となく分かる。

…ずっとお前を見てきたからな」




スッとこちらに来て私の頬を撫でた。


優しい感覚がした。



悔しいことに、それだけで警戒を緩めてしまいそうになった。



「フフッ。

身構えなくても何もしない。

第一今は武器も持ってないだろう」



よしよしと今度は頭を撫でる。



「…無くても戦い方はいくらでもある」



彼は一瞬驚いた顔をして、ニコッと笑った。




「やっと口を聞いたな」



嬉しそうに笑った彼は少しだけ子供のように見えた。



私よりも大人で背が高い彼は会ったこともないのに、どこか身近に感じた。



< 10 / 443 >

この作品をシェア

pagetop