拾われた猫。
「雨」
知るはずもない私の名前はいとも簡単に呼ばれた。
「言っただろう。
お前を見てきたと」
得意気にそう言った。
「ストー…「違う」
やっと辿り着いた私の答えは即座に否定された。
呆れたようにため息をついて、真剣な顔になる。
「雨、目覚めの時だ。
お前はこれから色んなものを取り戻すんだ」
彼と私の前に霧が立ち込める。
別に手を伸ばすでもなく、追いかけるでもなく、それをじっと眺めていた。
「またな」と声が響いて、真っ白な霧が包んでいく。
霧は光となって、たまらなく目を閉じた。