拾われた猫。




「着物…買ってもらってしまって、すいません」



どう言えばいいのか分からなくて、敬語になってしまう。


言葉もこれで合っているのかも分からなかった。



けど、彼の表情は少し柔らかくなった。


ガシッと私の頭を乱暴に撫でると、また歩いて行った。




「雨、言葉まちごうとる」

「…え?」



クスクスと笑いながら、彼女は私の耳元で囁いた。



───『そこは〝ありがとう〟言うんよ』



悪戯が成功したように笑って、芹沢鴨と一緒に行ってしまった。



彼女を見ていると、家族というものが分かってくる気がする。


今度会ったときに言ってみよう。


そしたらどんな顔をするのかな…。



< 120 / 443 >

この作品をシェア

pagetop