拾われた猫。



意識を無くす前の記憶を思い返してみる。



やっぱりこんなところに入った覚えもないし、浴衣を着た覚えもない。



ふと気配を感じて、身構える。


障子に人影が映って、警戒を強める。




スーッと障子が開く。




「お、やっと目覚めたのか」



人の良さそうなおじさんが入ってきた。


着物を着ていて、その手には桶を持っていた。



布団の横に座り、桶を置いた。




「見回りをしている時に君が倒れているのを見て保護したんだが、熱があったので起こすに起こせなかった」



ハハハッと困ったように笑ったこの人は誰なのか知らないけど、敵意は無いらしい。



何の殺気も感じられなかった。



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