拾われた猫。
「…芹沢さんの横暴は今に始まったことではない。
…だが、最近は度を超えている。
……この意味が分かるか?」
私は黙って横に首を振る。
本当は分かっている。
でもここは歴史通りの世界じゃない。
だから信じたかった。
結果が変わってくることを。
「お前は嘘をつくのが上手いけどよ、だからこそ分かっちまうもんもあるんだぜ」
左之は悲しそうに笑った。
平助は私を見ようとせず、俯いている。
梅姉さんが選んでくれた着物は今日も着ている。
男物の着物でも私が気に入るくらいには綺麗だった。
きっと死に際でもお父さんはあの仏頂面を崩すことは無いのかもしれない。
私は何も言わずに部屋を出た。