拾われた猫。
「一くんまで何?
っていうか、左之さんこそ盗み聞きじゃないの?」
「何言ってやがんだ。
お前も盗み聞きしてたくせによ」
「僕のはたまたまだって」
ぎゃあぎゃあと騒がしい3人を斎藤一は優しく見守る。
そして斎藤一もまた彼女のことを考える。
「初めは刀の切っ先みたいだったのにな」
藤堂平助の言葉で騒いでいた2人は静かになる。
「…未だ笑ったり泣いたりはしない。
…だが、雰囲気はとても柔らかくなった」
斎藤一は無意識のうちに口から言葉が溢れていた。
彼自身、彼女のことを気にかけていることに気づいてはいなかったようだった。
「随分と警戒心も取れて、屯所の中に馴染んでる。
……まるで猫みたいだな」
何気なく言った彼の言葉に4人は無言で納得する。