拾われた猫。
「雨ー!」
名前を呼ばれて振り返ると、向こうから走ってくる女の人と、その後ろを歩く男の人。
私の所に来ると、肩で息をしながら嬉しそうに笑った。
「あんた1人?
珍しいこともあるんやね」
ニコニコと笑う彼女の横に、仏頂面の男の人が追いついた。
対照的な2人。
彼らはどうしていつも一緒にいるんだろう。
どう見ても合わない。
でも……一緒に居ないと寂しい。
「雨!
甘味処行かん?
えろう美味しいとこあるんよ」
私の答えを聞く前に手を引いて、甘味処へと向かう。
お父さんは何も言わずに付き合ってくれる。