拾われた猫。
「雨」
暗い部屋に左之の声が響く。
ピクリと反応する私は左之の顔を見ることしか出来なかった。
「お前は知らなくていい。
だから、終わるまでちゃんと部屋いろ」
言葉の意味が私にも分かった気がした。
左之の表情は見えなかった。
でも彼はきっと悲しげに笑っていたんだろう。
障子が閉まる音とともにそこに座り込んだ。
───『皆あんたが好きなんよ』
あぁ、彼女は分かっていたんだ。
いつか私がこの事で悩む日が来ることを。
それでも彼女は私を想ってくれた。
彼女はどれだけ強い人なんだろう。