拾われた猫。



私が離れたと同時に、飛ばされた刀を拾ってトシが向かっていく。



彼の元に戻ろうと足を踏み出すけど、腕を引っ張られて行くことが出来なかった。



「左之……!」

「悪いが行かせられねぇ」


私の手を離す気はないらしい。


後ろで刀が交わる音がする。



後ろを振り向くと、お父さんが必死に抵抗している。



「……お父さん…」


抵抗も虚しく、少しずつ傷が付けられていく。


その時、勇の刀がお父さんの刀を飛ばした。



全てがスローモーションに見えた。


私が左之の手を慌てて振り払うけど、今度は後ろから抱き込められる。



「お父さんっっ!!!!!」



自分でもこんなに大きな声が出るのかと思うくらいだった。


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