拾われた猫。
左之の腕が緩んだけど、私はその場に立っているのがやっとだった。
これがきっと俗に言う〝脱力感〟。
頭では分かっていた。
〝この人は死んだのだ〟と。
心が…ついて行かない。
皆はお父さんを見ていたり、背を向けていたり、それぞれだった。
「…お前ら、片付けを」
トシが「片付けをしろ」と言いかけた時だった。
ジャリッと地面を踏む音がした。
目の前の出来事のせいで注意力が散漫になっていた。
バッと振り返ると、いて欲しくない人が立っていた。
「…せり…ざわさん?」
彼女の目には彼しか見えていなかった。
動かなくなった彼を見て、カタカタと震えながらも笑っていた。