拾われた猫。
彼女はお父さんに近付いて横に座ると、穏やかに眠るその人に触れる。
愛おしそうに頬に触れた時、彼女の震えが止まった。
代わりに彼女の瞳からは大粒の雫が伝っていく。
「まだ…温かい…」
優しく微笑む彼女はきっと怨みや憎しみとは無縁の人だろう。
私たちに怒りの感情を向けようとしなかった。
「どうして…うちを連れていかんかったん…」
クスクスと笑いながら彼の頬を撫でる。
私は彼女の側に行けない。
彼を守りきれなかった私が何を言えばいいの…。
何を言ってもきっと彼女は許してくれる。
それが辛いと思った。