拾われた猫。
彼らに刀を向けたくは無かった。
でも、守らなければならない。
そのためには捨てなければならないものがある。
空いている片手で袖口の刀を出そうとした。
「もうええんよ、雨」
優しい迷いのない声が私を止めた。
バッと彼女の方に振り返ると、困ったように笑ってもう一度「もうええ」と言った。
「何が…?
私は…嫌だ…。
…っ……総司!」
縋るように彼の名前を呼んだ。
その声も虚しく、彼が刀を収めることも動揺することも、私を見ることも無かった。
「堪忍や、雨」
振り下ろされた刀に怯えることも避けることもせずに、散らされた血液は桜の花びらのように散った。