拾われた猫。
「あ…め」
緩められた手から逃れて、まだ息のある彼女の傷口を急いで手で塞ぐ。
「…待って、止血すれば……!」
傷口を手で押さえるけど、私の小さな手では大きな傷を全て覆うことは出来ない。
それでも必死に押さえた。
そんな私を血で濡れた口でクスクスと笑った。
「…雨、うちはね、この…人と、一緒に……逝きたい……。
……心残り、も…あるんよ」
途切れ途切れで語る度に、血が溢れる。
分かっていた。
この人はもう…駄目なんだと。
総司が急所を外すわけがない。
でも、傷口から手を離すことが出来なかった。
希望を捨てることは出来なかった。