拾われた猫。
「…なんて顔、してるんよ。
でも、あんたの顔が…崩れるん、見るん…は……初めてやね……っっ……。
……嬉しいわ…」
彼女はゆっくりと動かした手を私の頭に乗せた。
それが限界らしく、その手がそこから動くことは無かった。
「……笑う…た顔、……見てみたかっ…た。
………あんたは私の…たった1人の…妹…思うてた……」
梅姉さんの瞼が少しずつ下がっていく。
「ほんま……大好きやったよ…」
その言葉を言い終えたあと、梅姉さんの大きな瞳は開くことはもう二度と無かった。
彼女は、最愛の人の隣で最後まで可愛らしい笑みを絶やさなかった。
気づけば梅姉さんの傷口の上に無数の雫が落ちていた。
この日、私は初めて泣いていた。