拾われた猫。
「雨、飯持ってきたよ」
「…あぁ…うん」
平助に生返事を返す。
しばらく私をじっと見つめていたけど、他の隊士に呼ばれて行った。
平助がいる間、花から一度も目を移さなかった。
足音が私の部屋に近づく度、彼らが来てくれたんじゃないかと勘違いする。
そして思い知らされる。
彼らはもういない。
私が彼らの姿を見ることはもう無いのだと。
あの時伸ばした手にはもう血液の跡は無い。
それなのに、あの時散ってきた血液の温かさも、徐々に冷たくなっていく柔らかい肌の感触も全部残っている。
あの時、あんなに痛かった胸がもう痛くない。
苦しかったのに、もう普通に息が出来る。
なのに、何で動揺が消えてくれないのだろうか。