拾われた猫。
掴みかかりそうな左之の袖を咄嗟に掴む。
「…飲まされただけ」
それだけ言うと、勘づいたのか投げ出された甘味を見た。
皆納得したように一触即発な雰囲気が砕かれた。
「…また口移しで食べさせられたいなら話は別だが、嫌なら食べろ」
それだけ言うと、部屋を出て行った。
勇は「口下手だからなぁ」と言って、笑って彼を追いかけた。
「あーぁ、せっかくの甘味がこんなふうに使われるなんて」
食べ掛けの甘味を手にする総司の手を掴んだ。
そのまま自分の口の中に入れる。
「…雨ちゃん……。
自分で食べなよ」
「あんたが持ってるから」
モグモグと口を動かし、ゴクリと飲み込む。
私にとっては久しぶりの食事だった。