拾われた猫。



───『……笑っ…た顔、……見てみたかっ…た』



あの時の記憶が頭の中を駆け巡る。



悪夢のように見ていた記憶じゃなく、温かいものが溢れる。




「〝ありがとう〟って……伝えておけば…良かった…」



ボロボロと溢れる涙と言葉に彼は目を見開きながらも、ただ黙って聞いてくれた。



「側にいて……、笑ってくれ…て、…うぅっ……私を〝妹〟って……呼んで、〝お父さん〟って……っ!…呼ばせてくれて」



私にとっては初めてだった。


妹と呼ばれることも、姉さんと呼ぶことも、お父さんと呼ぶことも。


たったそれだけのことが私には嬉しくて仕方なかった。


血なんて繋がってないのに、本当の家族を感じさせてくれた。




「〝ありがとう〟って、笑いたかったんだ…!」



小さな叫びはもう彼らには届かない。


どれだけ泣いても、私の前に現れてはくれない。



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