拾われた猫。
「あのね、平助はあの時『俺のせいで』私がここにいなきゃいけなくなったって言ってたよね」
なんて言ってあげればいいのか分からなくて、あの時は何も言えなかった。
苦しいほどの涙も、死にたくなるほどの痛みも、初めて知った。
だからこそ、彼らの優しさがどれほど大事なものか分かった。
「平助、ここに連れてきてくれてありがとう。
辛いこともあったけど、ここに来たおかげで大事なものに気づけたから」
フワリと笑う私を平助は見ていた。
「…」
ボーッと私を見ている彼に首を傾げてみせると、ハッと我に返った。
「あ…えっとっ。
……俺の方こそ、ありがとう」
「なんで『ありがとう』?」
平助は恥ずかしそうに頭の後ろに手を置いて、ガシガシと掻いた。
「俺に…笑いかけてくれたから」
遠慮がちにそう言った彼は照れくさそうに笑った。