拾われた猫。



『雨へ

こんなことになるんやったら、もっとはように渡しとくんやったね。


今日、芹沢さんとうちはもう二度とあんたに会えんようになるんやろね。


初めて会って出かけた時、うちの髪を春の満開の桜のようやって言うてくれたやろ?


…実は芹沢さんも同じこと言うたんよ。


気味が悪い言われてたこの髪を褒めてくれたんは2人目やったから、ほんまに嬉しかったんよ。


雨、あんたはうちの妹やよ。


うちの可愛い可愛い大好きな妹。


芹沢さんもあんたの前では言わんかったけど、あんたのこと好きやったんよ。


未練があるとしたら、あんたの笑うた顔見れんかったこと。


あんたは一人やないんよ。


先に逝くけれど、うちも芹沢さんも見守っとるから。


たくさん笑うて、たくさん泣いて、たくさんの人を好きにおなり。


たくさん生きたら、またうちらに聞かせてほしい。


ほんまに愛しとるよ…雨。


梅より』




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