拾われた猫。



梅姉さんの手紙を読み終わったあと、それをギュッと抱きしめた。



前かがみになった私から零れる無数の雫は、綺麗な着物の上に落ちていく。



「……っ…!」



声を抑えて、2人の前で泣き崩れた。



彼女は気づいていたんだ。



芹沢さんが自分を置いて1人で逝こうとしたこと。

芹沢さんを追いかければ自分も死んでしまうこと。

私が2人を庇おうとすること。



全部全部分かっていたんだ。



彼女が笑うだけで、周りは花が咲いたように煌びやかになった。


彼女がいるだけで、心が楽になった。


彼女は芹沢さんの横にいるだけで幸せそうだった。



彼女はとても優しくて、強い人だった。



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