拾われた猫。
「……俺はお前が恨んでいると思っていた」
トシはふと声を漏らした。
目の端を手で拭って、トシを見た。
「トシを?」
「あぁ」
私はフッと笑みを零した。
「そんなことは考えなかったよ。
落ち込んだけど、不思議と怒りは無かった」
お父さんは彼らの考えを受け止めたからこそ、梅姉さんを置いて行った。
梅姉さんはそんなお父さんを見抜いて受け止めたからこそ、お父さんを追いかけた。
私が2人の考えも、彼らの決断も受け止めなければ2人の思いが無駄になってしまう。
「丞、ありがとう。
もう大丈夫だよ」
「あぁ、良かった」
私から手を離して、微笑んだ。
部屋に戻ったあと、梅姉さんから貰った着物を大事にしまった。
チャンスがあれば…着てみようかな…。