拾われた猫。
笑顔
「あいつらには笑いかけるが、相変わらず私には笑ってはくれないのか」
クスクスと笑う久しぶりの彼はどこか嬉しそうだった。
「……あの時、私の頭の中に話しかけたのはあんただよね」
琥珀色の彼はキョトンとした表情を見せたけど、理解したかのように「あぁ」と手を叩いた。
「そうだ。
あの状態はお前にとってはいい状態ではなかったからな」
ヨシヨシと頭を撫でて宥めてくる。
あの時、呼吸が荒くなっていい状態ではなかったのは本当のこと。
この人のおかげで落ち着いたのも本当のこと。
でも、腑に落ちないことがある。
「……なんで、私はあんたの声に落ち着いたの?」
左之がいてくれたということもあったんだろうけど、それだけじゃなかった。
直接体を弄られたように急に軽くなった。