拾われた猫。
ふわりと私から離れて、少し上に浮くと前で腕を組んだ。
「それはお前自身に聞いてみるといい」
また訳の分からない答えが返ってきて、苛立ちを覚える。
そんな私を彼は眉を下げてクスリと笑った。
悲しそうな、困ったような。
「……私があんたのこと頭の中に呼んだのは聞こえてたわけ?」
お父さんたちが亡くなる前、歴史通りではないはずのこの世界がどうしてそこだけ歴史通りに進んだのか分からなかった。
この人が現れるのは不定期。
こちらからの呼び方が分からなくて、適当に頭の中に彼を呼んだ。
「気づいていた」
やっぱり思った通りだった。
この人は私をずっと見ていると言った。
聞こえなかったのではなく、応じなかったんだ。