拾われた猫。



「総司も変わったけど、お前も随分笑うようになったな」



彼の横顔が少し切なそうに見えた。


そして私を向いて、手が伸びてきた。




その手は頬に伸びてきたと思ったけど、頭に手がかかった。



ゆっくりと撫でる手はいつもよりも心地よく感じた。



「左之、ありがとう」



私も優しく微笑んだ。



左之は「ん?」と首を傾げた。




「総司のこともだし、私のこと気づいてくれて」

「そんなこと当たり前だろ」




そう言ってくれる彼は嬉しそうだった。



総司が心を許してくれたことも嬉しかったけど、左之が「当たり前」と言ってくれたことも嬉しかった。



誰かのためになりたいと思うのに、結局私が救われているような気がした。



< 260 / 443 >

この作品をシェア

pagetop