拾われた猫。
結局、猫又の世話はトシの〝命令〟によって押し付けられた。
猫又を檻に入れたまま、自分の部屋に連れてきて観察していた。
猫又は動かない。
私を見ることも無い。
さっきの事で私は怖がられているのかもしれない。
ご飯はいつ食べるんだろう。
何をあげればいいんだろう。
普通のペットすら買ったことがないのに、猫又なんかどう育てればいいのか分かるはずもなかった。
そもそもこの子は雌雄はどっちなのか。
檻の中に手を伸ばす。
「シャーッ!」
簡単に噛まれてしまった。
指先から流れ出す血液のように、猫又の目からは恐怖と強がりが溢れてくる。
「結構痛いな…」
溢れる血を手で抑える。
「ちょっと洗ってくるから待ってて」
猫又に声をかけて部屋を出た。