拾われた猫。




しばらく彼の部屋の前で待っていた。




最近少しだけ暑くなってきた。


私がここに来たばかりの時はまだ少しだけ肌寒かったのに。




「もうすぐ夏か」



生暖かい風が私の緋い髪を後ろに揺らす。



前まで人前に出る時、この緋い髪をすごく気にしていた。



今は素で居るのが普通になった。




あの人は私の髪を「血の色」と言っていた。


周りも同じように「血の色」だと言った。




ここの皆は「暁や夕焼けの色」だと言う。



緋いことが綺麗だと言われることがあるのだと初めて知った。



嬉しいとか悲しいとか寂しいとか、それまでよく分からなかった。



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