拾われた猫。
「そうか!
では香月くん、君はどこに住んでいる人なんだね?」
その質問には答えようが無かった。
夢の中が現実なんて馬鹿げた話があるわけがないと思っていた。
でも実際にあの男に夢の中で会って、こんな変なことになっている。
憶測でも今は信じるしかない。
私はあの男によって別のところに飛ばされたのだと。
「あんたたちが知らない別の所」
「それは〝王の側〟ということか?」
ここにいる私以外の反応が変わり、険しさが増す。
「〝王の側〟がどんな所か知らないけど、私の国に王政なんかない」
私が話したことにより、雰囲気は切り詰めていたものが穏やかになった気がしたが、変わっていない。
「…私はそもそも江戸國なんか知らなかった。
そしてあんたたちも東京なんか知らない。
この意味は私にも信じられないけど、理解は出来る」
しばらく沈黙が続いた。