拾われた猫。




竿を上げて、急いで川に入る。


私の足がそこにつかないくらいに深い。




この子の体では恐怖でしかない深さだろう。



潜りながら沈む体を片手で大事に引き寄せると、水面に向かって泳ぐ。



上に上がる時、この子が落ちた所を見る。



すると、石が少し出ているところを見つけた。


恐らく、包帯の上から傷にピンポイントで当たったんだろう。


そこからバランスを崩して落ちたのかもしれない。




背中をトントンと軽く叩いてやり、水を出してやる。


虚ろな目で私を見る。



「びっくりしたろ。

もう大丈夫」


優しく微笑んで頭を撫でてやると、ゆっくりと目を瞑った。


呼吸が正常なことを確認すると、荷物を持って屯所に帰ることにした。



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