拾われた猫。
月を見ながら歌を終える。
眠る猫又の後ろから障子がスッと開いた。
「綺麗な歌だな」
浴衣姿の佐之は寝ていたのかもしれない。
「ごめん、起こした?」
「いや、一人酒の最中に良い酒の肴が聞こえたんでな」
瓶を上にあげながら中に入ってきた。
その様子にクスリと笑ってしまった。
佐之は私の近くに座って、穏やかに眠る猫又を見た。
「檻に入れておかなくて良いのか?」
「逃げたら捕まえる」
力こぶを作るように片手を上に上げると、佐之は可笑しそうに笑った。
持ってきたお猪口を出したので、お酒を注いでやる。
「ありがとう」
クイッと一気に飲んだ。
また私にお猪口を出したので注ぐ。