拾われた猫。
「お前がずぶ濡れになって帰ってきたって聞いたからどうかと思ってたが、重症なのは猫又の方か」
穏やかな寝息を定期的に立てるこの子は、佐之が来たことにも気づかないくらい寝ている。
私が近くによるだけで威嚇してきたとは思えない。
「あの歌はなんて歌なんだ?」
猫又を見ているうちに、佐之の視線は私に帰っていた。
歌の題名なんか考えたこともなかった。
「分からない。
でも…小さい時から知ってる」
思えば、小さい時から教えてもらったわけでもなく、普通に歌っていた。
こんな歌はあの人が歌うわけもなくて。
考え込む私をまたクスリと笑った。