拾われた猫。



日の出が見え始めた頃。



女性は屯所に近づき、直に香月雨の姿を拝見する。



「……雨ちゃん…、笑うようになったんだね」



ホッとしたような表情の彼女は香月雨しか、目に入ってはいなかった。



そして油断した時だった。



なにかに気づいたようにギロリとこちらを見た。



それと同時に女性はサッと移動して、屯所の塀に上がった。



やがて彼女は気配を失ったのか、視線を変えた。



「鋭いのは変わらないのか」



クスクスと笑う女性には嬉しさが滲む。



女性は屯所に背を向け、その場を後にした。




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