拾われた猫。
自分の部屋に戻ると、猫又の入った檻を持って、トシの机の上に置く。
「……何やってんだ?」
「少しでも近寄ったら唸られる。
檻に触ろうものなら噛まれるよ」
黙り込んだトシに満面の笑みを向けて、一たちが待っている門へと急いだ。
「刀は持ってかないのか?」
2人は怪訝そうに私を見た。
袖口から刀を出してみせると、納得したように目を見開いて頷いた。
それから私たちは屯所を出て、町を見回る。
2人1組でバラバラに動くことになっているので、私は一と一緒にいることにした。
途中、総司と見回った時に行った甘味処を通りかかった。
何気なく見た時、見慣れた顔とバッチリ目が合ってしまった。
私は何も見ていないように目を逸らした。