拾われた猫。
一はまだ気づいていないようだった。
一の手を引っ張り、早歩きをする。
「…香月?」
「いいから」
早くその場を過ぎようとした時だった。
一の手を引っ張る私の手首は何者かによって掴まれた。
バッと振り返り、私の手首を掴む人物を見た。
「なんで逃げるの、雨ちゃん」
真っ黒い笑顔を放つのは総司だった。
「…あんたがいたら厄介なことが起こりそうだったから」
「酷いなぁ」
クスクスと笑う彼は私の手を話す。
「雨ちゃんが僕を見た瞬間に一くんの手を握ったから、妬かせたいのかと思ったよ」
「…………何言ってんの?」
訳の分からない彼の言葉に私たちは頭を捻る。
笑っていたけど、答えようとはしなかった。