拾われた猫。



ぴょんっと私の足の上に乗って、手に頭を擦りつける猫又を見ていた。




「刀、抜かなかったの?」



総司は怪訝そうな顔で私を見る。



猫又をそっと撫でると、「ニャー」と嬉しそうに鳴いて座り込んだ。




「殺し屋〝Noah〟は、受けた依頼は完璧にこなす。

殺せと言われれば誰でも殺した。

……それが良心のある悪党でもね」



頭の中にはお父さんと梅姉さんが浮かんでいた。



猫又をゆっくりと撫でながら話を続けた。




「あの時の俺は何も知らなかった。

お父さんたちに出会って、俺はお父さんと同じような人も殺してきたのかもしれないって……。

そう思ったらいつも刀を抜けないんだ。

刀じゃなければ簡単に斬れるのに」



自嘲気味にクスクスと笑う私は、滑稽に見えるのだろうか。



中途半端な善意は自分を鈍らせる。



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