拾われた猫。



「……香月くん、包帯を変えよう。

悪いが、他の者は出てくれ」




丞の言葉に、私と丞以外が外に出た。



木箱を持ってくると、包帯を取り出す。



私の包帯をクルクルと外すと、消毒液のようなものを付けて、新しい包帯を巻いてくれる。




「……丞、ありがとう。

気を遣ってくれたんでしょ?」

「……いや、いい」



照れたような声が少し面白くて、クスクスと笑ってしまった。



どうして左之には分かってしまうんだろうか。



私の思っていることを、左之の前では隠せない。



刀を抜いてしまえば、我を忘れてしまうような気がして。



皆と一緒にいて、お父さんたちといて……教えてもらったことを忘れてしまうような気がして。



刀を抜こうとした時、あの時のことがフラッシュバックするのは自分のせいなんだ。



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