拾われた猫。
名前
「傷はもういいの?」
猫又と遊んでいると、いつの間にか総司が側まで来ていた。
私はコクンと頷くと、安心したように笑った。
あれから1ヶ月が経ち、季節は夏本番を迎えていた。
傷自体完全に治ったわけではないけど、普通に動けるくらいには回復した。
「その猫又、ここに来て長いね」
私の隣に座って、汗ばんだ体を冷ますように片手をパタパタと顔の下で扇ぐ。
「雨ちゃんにすごく懐いたし、名前とかつけたの?」
総司にとっては素朴な質問だっただろう。
けれど、私はそんなこと考えたことがなかった。
この子と仲良くなれて、嬉しかった。
でもこの子は野生に帰さなければならない。