拾われた猫。
「この子の事なんだけど」
私の肩から猫又を下ろして、左之の顔の前に抱く。
「屯所で飼いたいなって思ってて。
でも私以外の人には懐かない。
迷惑になるならちゃんと野生に帰す方がいいのか迷ってる」
猫又を膝の上に下ろして、頭を撫でてやると手に頭を擦りつけてくる。
その仕草がとても愛おしく感じられた。
これが所謂母性というものなんだろうか。
「そいつもお前が必要らしいな」
左之はその光景を微笑ましそうに眺めていた。
周りから見ても、この子が私を必要としてくれていると思う程懐いてくれているのは純粋に嬉しかった。
「連れてきたのは近藤さんなんだから、近藤さんが『ここに置く』と言えば皆異論はねぇはずだ」
左之の言葉に素直にコクリと頷いた。
心無しか、この子も嬉しそうに見えた。