拾われた猫。
この男には私の考えは筒抜けのようだ。
そもそもどうしてこの男は私の中に出てくるのだろうか。
「おっと…時間だ、雨」
妖艶に笑う彼の前に霧が立ち込める。
「雨、ここはお前のための世界だよ。
お前が答えを見つけるんだ」
同じような言葉を繰り返して、彼は霧の中に消えていった。
目が覚めると、今ではもう見慣れた天井が目に入る。
「にゃー」と鳴きながら、私の頬に擦り寄るノアを寝転んだまま抱き上げる。
「フフッ、小さいな、お前は」
子猫のような小さい体は私の両手で収まってしまう。
───『あの猫又はお前を主と認めている』
琥珀色の彼の言葉は、言葉を交わせないこの子に確かめようもない。
「またあの男に逃げられたよ」
ノアに眉を下げて笑って見せた。
この時私は自分の身に起きていることを知らずにいたのだった。