拾われた猫。
第五章
間者
コソコソと私を見て、何かを話している隊士をよく目にするようになった。
「雨」
縁側に座っていると、丞が私を呼んだ。
「副長がお呼びだ」
丞と一緒にトシの部屋に行く。
部屋の中にはトシと勇が居た。
私が部屋に入ると、丞はどこかへ去っていった。
2人の表情は固いものだった。
私が2人の前に座ると、単刀直入に話し始めた。
「この屯所に間者が紛れ込んでいるという噂が流れているんだが」
トシの鋭い視線が私を射抜いた。
つまり、2人が言いたいのは私がそうではないのかという事だろう。
私がここに来てすぐなら、平助に連れられて来ただけだから疑われることは無かっただろう。
でも今の私はここにいた時間が長い。
疑心暗鬼の屯所内で、私を間者と疑うのも無理はない。