拾われた猫。
隊士たちが私を見てコソコソ話していたのは、噂の内容が『香月雨が間者かもしれない』と言うことなら…。
「賢いお前なら俺たちが何を言いたいのか分かっているだろうが、敢えて聞く。
…お前が間者か?」
初めて皆に会ったときと同じような目を向けられた。
…あの時は慣れていた。
元の世界では、私に向けられる目なんて〝恐怖〟か〝好奇〟、そして〝怒り〟くらいだった。
甘えていたのかもしれない。
私は、警戒を怠っていた。
ここに私の敵は居ないのだと、根拠もない理由で安心していた。
「王の側についたのか?」
私を追い詰めるような目に初めて恐怖を覚えた。
あの人が居なくなったように、私はまた居場所を失うのか。
その時、ドタドタと走る音が聞こえて、勢いよく障子が開いた。