拾われた猫。




私に何人もの殺気が向けられる。




「雨…!」



苦しそうな顔で私の名前を呼ぶ平助に、一瞬だけ柔らかく笑う。



平助は目を見開いて、何か言いたげに口を開いたと同時に私は殺気を放った。



「……!」



トシと勇は咄嗟に刀に手を掛け、構えたけど平隊士たちは青ざめる者や構えたけど動けない者、何も出来ずに立ち尽くす者がいた。




ノアは私が殺気を放ったことで完全に周りを敵と判断したのか、肩から降りて牙を向いている。




「何してるの?」



総司の冷静な声が沈黙に流れた。



巡回に行っていた総司と左之たちが帰ってきたのだった。




「おいおい、近藤さんも土方さんも刀に手なんか掛けてどうしたんだよ。

雨、お前もお前らしくないぞ」




左之の宥めるような口調がこの雰囲気の緊張を解いたのか、少しだけ柔らかくなる。



< 354 / 443 >

この作品をシェア

pagetop