拾われた猫。
「おい!
そこの娘!」
男の声が聞こえたと思ったけど、私ではないと思って普通に歩いていた。
すると、急に肩を捕まれて振り向かされる。
「お前のことだ!」
顔を真っ赤にした酔っ払いは少しイライラしながらも、品定めするように上から下までジロジロと見る。
その居心地の悪さは最早〝気持ち悪い〟のレベルだった。
「何か?」
たまらなくなって、苛立ちを抑えながら問いかける。
男は顎に手を当てて、ニヤニヤと薄ら笑っていた。
「いい体じゃねぇか!
よし、お前を買う!」
ヘロヘロに酔って、遊女と一般人の区別がつかなくなっているようだ。
「私は遊女ではございません。
どうかご容赦を」
ぺこりと頭を下げた。
相手をするだけ無駄だろうとは思ったけど、騒ぎを大きくするよりずっといい。