拾われた猫。
「そこに立ってないで座りなよ。
それともいつもそこに突っ立ってるの?」
「いえ…、では」
そう言って、私の前に座った。
綺麗に正座をして、何かを待っているようだった。
「…もう歌われないのですか?」
不思議そうな顔は私の歌をしっかり聴いていたようだ。
「私は…あなたの歌が好きなのです」
嬉しそうに笑う彼女はまるで前も聴いたことがあるような物言いだった。
「一度聴いただけなのに、好きなの?」
「いいえ、前も一度聴かせていただいたのです。
新選組の屯所の近くを通りかかった時に」
ノアの時かもしれない。
そこまで大きな声で歌っていたわけではないけど、彼女が知っているということは嘘ではないのだろう。
「……なんか、恥ずかしい」
「ふふっ」
彼女は私のことを全然知らないくせに嬉しそうだった。