拾われた猫。
「お侍様、見苦しゅうございます。
どうかお止め下さい」
気配を消して近づいた私は彼女に掛かった手を掴み、力を込めた。
男は私に気づかなかったことに苛立ったのか、青筋が浮かんでいた。
「女。
お前はこの女を庇うのか」
「いいえ、私は貴方様の為に止めたのです。
侍の品格を損なうような真似はおよしになってください」
普段使わないような言葉を見事に使い分ける私に驚いたのか、あるいは私がここにいること自体に驚いたのか。
女性は腰が抜けた様子で目を見開いて見ていた。
「貴様ァ…!」
私から手を振り払って、今度は私に殴りかかる。
動きにくい着物で素早く男の後ろを取り、首の辺りに手刀を落とした。
寸分違わず落とした手刀で、彼はバタリと倒れた。
唖然とする彼女の手を引いて、その場を離れるのだった。