拾われた猫。
男はそのまま警戒もせず、遊郭に入っていった。
女の格好では遊郭には入りづらい。
「…はぁ」
ため息を一つ落として、人気のない入口を見つけるべく、少し歩く。
そう簡単にはないと思っていたけど、案外裏口に回れば煌びやかな世界とは違う、薄暗い道に出た。
小さな戸が半開きに開いている。
戸の横にあるゴミからして、ここはゴミを捨てる為に使っている所謂〝勝手口〟だろう。
中を覗き見ると、警備が2人いる。
そっと中に入り、1人の後ろに周り、手刀を落とす。
「…っ!」
声にならない声と同時にドサッとその場に倒れた。
「どうしたー?」
もう1人の男が呑気な声とともにやって来る。
素早くその場を離れる。
「おいっ!
どうしたんだ?!!」
騒ぎを後にして、あの男を探しに屋根裏に続く道を探していた。