拾われた猫。
美華さんは空になったお皿をおぼんの中に入れ、立ち上がる。
「それでは今日はおやすみなさい」
「…あ、うん。
すごく美味しかった。
ありがとう」
私が微笑むと、彼女は目を見開いた。
そしてはにかむように笑って、帰っていった。
彼女が去っても、私は彼女がいた場所から目を離せないでいた。
どうして彼女はあんな表情をしたのだろう。
疑問だけがグルグルと頭の中を回っている。
けれど、答えが出る事なんて無かった。
「にゃぁ」
器用に戸を開いて中に入ってきたのはノアだった。
私を見ると、駆け寄って膝の上に座った。
結ばれていた2つの尻尾は解けていた。
「ありがとね」
頭を撫でてやると、嬉しそうに喉をゴロゴロと言わせた。