拾われた猫。
「現実のお前はきっと……温かいのだろうな」
独り言のように呟いた彼が、いつか消えてしまうんじゃないかと思った。
何故そう思ったのかは分からないけど、その手に触れずにはいられなかった。
「……」
頬にある手に自分の手を重ねた。
懐かしいと思うのは……きっと気のせい。
その時、フラッシュバックのように映像が流れた。
私を見て、幸せそうに微笑む男女。
……待って。
もう少しだけ…見ていたい。
その時、頬にあったもう片方の手が私の視界を覆った。
「……駄目だよ、雨。
今回は…、もうお目覚め」
いつもとは違う声の硬さに動けなくなり、いつの間にか現実に戻っていた。